会計ソフトと簿記の入門

1.はじめに

お店や事業を始めたので税金の申告に必要な会計帳簿を作成しなければならないけれど、会計ソフトというものをまだ使ったことがなく、簿記の経験もないという方が、何とか自力で申告実務まで出来るようになり、ついでに日商簿記検定三級資格の取得が出来るようになることを目標とします。

会計ソフトは、無料で使えるシンプルな「LS会計帳簿」を使用します。この会計ソフトはパソコンなどのブラウザから操作するクラウドタイプのもので、インターネットが利用できる環境があれば動作します。このソフトはユーザーの識別にGoogleアカウントを使用しますので、Gmailアドレスをお持ちであればログイン可能です。

スマートフォンやタブレットでご利用されたい場合は、Android OS専用版もあります。機能的にはWeb版と同じです。 iOS専用版はありませんが、iPhoneなどからブラウザ経由でWeb版を利用することは可能です。

会計ソフトからの視点、簿記からの視点、どちらか一方ではなく、二つの視点から同時に理解を深めていきたいと思います。

2.会計ソフトの起動と終了

「LS会計帳簿(Web)」は、Googleのクラウドインフラ上で稼働するアプリケーションシステムです。ユーザーの識別にGoogleアカウント(Gmailアドレス)を使用します。 http://lskaikei.linetsystem.co.jp/ ブラウザで上記のURLを指定しますと下記のログイン画面が表示されます。 Googleアカウント(Gmailアドレス)をおもちでない方は、上記画面の「アカウントを作成」というところをクリックして新たに作成することができます。

アカウントとパスワードを入力すると下記の画面が表示されます。 これは、アプリケーション(LS会計帳簿)に対して、あなたのGoogleアカウントに関する情報を知らせてもよいかどうかを確認する画面です。情報というのはメールアドレス ・ニックネーム・ユーザー番号などのことで、パスワードや本名などの情報については開示されることはありません。

「許可する」ボタンをクリックすると「LS会計帳簿」のメニュー画面が表示されます。(指定により最大30日間許可が有効となります)

終了する時は、ブラウザを閉じてください。メニュー画面のログアウトボタンは必ずしもクリックする必要はありません。別のアカウントでログインしたい時などにクリックしてください。

3.会計ソフトの初期設定

LS会計帳簿の初期設定は、1分もかかりません。

メニューの会計期間設定をクリックすると、下記の画面が表示されますので、会計期間を入力します。個人事業主の場合は暦年となります。

ここで指定した期間内のデータが入力可能となり、集計の対象となります。たとえば、月次単位で集計することも可能です。

過去のデータを参照する時など、いつでも自由に変更可能です。

以上で、初期設定は完了となります。今後は日々の経済活動である取引内容の入力を行っていくことになります

4.簿記とは何か

簿記は帳簿記録の略といわれており、数百年以上も昔から存在する優れたシステムです。システムというのは、コンピュータのことではなく、複数の要素が体系的に構成されているもののことです。

簿記には複式簿記と単式簿記がありますが、一般的に企業で行われている簿記のことを複式簿記といいます。複式簿記は税務署から推奨されており、これを用いた税務申告は青色申告という特典が受けられます。また、日商簿記検定は複式簿記の検定です。単式簿記というのは、家計簿のようなイメージのものです。

この記事で扱うのは複式簿記のほうで、この記事で単に簿記といった場合は複式簿記のことをさしています。また、会計ソフト「LS会計帳簿」は、この複式簿記というシステムをコンピュータでそのまま扱えるようにしたもので、当会計ソフトを使用することにより青色申告の特典を受けようとする狙いもあります。

簿記の教科書であれば、仕訳とは何か、勘定科目とは何かというところから始まるところですが、まずは複式簿記で帳簿をつけると何がうれしいのか、どんな良いことがあるのか、ということを簿記というシステムのインプットとアウトプットの面からみていきたいと思います。

5.簿記のインプット

簿記では日々の経済活動を「仕訳」という特有の形式でインプット、記録します。会計ソフト「LS会計帳簿」では、下記のような取引があった場合「仕訳」を記録する画面で入力します。 1月1日 現金10万円を元手に商売を始めた。 1月2日 商品を仕入れ、現金で6万円支払った。 1月3日 商品を完売し、現金8万円を受け取った。

日付、金額、摘要については、簿記の経験が無くても特に違和感も無く入力できるかと思います。 借方/貸方と表示されている部分から選択するものは「勘定科目」といい簿記の集計単位のことです。現金とか預金とかその多くは現実世界に存在するものであり一般的な言葉の感覚で選択可能な場合が多いと思います。

そうしますと簿記未経験者にとって、わからないのは「左か右か」ということだけになります。この部分が謎の部分であり簿記特有の部分ということになります。

借方・貸方というのは簿記特有の言い方で、それ自体にはあまり意味はなく、左側・右側のことにすぎません。

とりあえず、残り二つも入力してみますと仕訳帳は下記のようになります。

なぜこのような「仕訳」という形式のインプットが必要になるのか、簿記のアウトプットの面から考えていきたいと思います。

6.簿記のアウトプット(1)

最終的な簿記の目的・成果物(アウトプット)は、下記の表のように「どれだけ儲かったか」ということと「商売用のお金や物が今どれだけあるか」ということを集計することです。

実際に商売をやっていれば、お客さんの入り具合で感覚的に儲かっているかどうかはわかるかもしれませんが、帳簿をつけることにより、それを客観的な数字で裏付けることができ、経営に役立てることができます。

また、帳簿上のあるべきお金や物の額と実際に存在するお金や物の額を比較することにより、資産管理を有効に行うことができます。

出資者や関係者がいる場合はこの計算記録を報告することができますし、納税という面からの要請に応えることも可能になります。

「精算表」をみると集計単位である「勘定科目」は、儲けを集計するためのものと財産の状況を集計するためのものに分かれ、さらに、借方に残高があるものと貸方に残高があるものの四つの部分に別れています。 損益計算書の左(借方):費用 損益計算書の右(貸方):収益 貸借対照表の左(借方):資産 貸借対照表の右(貸方):負債と資本 分かれているのは下記のような集計をしたいためです。

① 収益 - 費用 = 利益

② 資産 - 負債と資本 = 利益

①のように、お客さんからもらったお金から仕入代金を引く方法で儲けを計算することができます。 ②のように、今もっているお金から最初にもっていたお金を引く方法で儲けを計算することもできます。 儲けを計算するには二通りのやりかたがあり、どちらの方法で計算したとしても同じ金額になります。儲けた分が財産の増加分になるからです。

結局、簿記のやりたいことはこのことだけで、このために勘定科目が左側のグループと右側のグループに分かれているので、インプットである「仕訳」もそれに応じて考えればよいことになります。

結論からいいますと、会計ソフトで仕訳を入力するために覚える必要があるのは下記のことだけです。 勘定科目は、①費用 ②収益 ③資産 ④負債資本のグループに分かれ、費用と資産が増加した時は左側(借方)に書き、収益と負債資本が増加した時は右側(貸方)に書く

「費用」がなぜ貸方ではなく借方にあるのか、「資産」がなぜ貸方ではなく借方にあるのかということは考える必要はありません。これは簿記という体系での決まりごとなので無条件に受け入れるしかありません。

精算表の現金のところをみますと、借方(資産)に12万円という残高が算出されています。このような計算を行うためには、どのようなインプット(仕訳)が必要になるでしょうか。

一般的に残高というものは「増加分-減少分」という計算式で求められますので、借方(左側)に残高をもつ場合は、増えた時は借方(左側)に、減った時は逆側に書くようにすればこの計算は可能となります。

再度、仕訳帳をみてみますと「10万円(増加) - 6万円(減少) + 8万円(増加) = 12万円(残高)」という計算で現金の残高を求めることができます。

仕訳を行う際には、現実世界の「もの」が上記四分類のどれになるかを考えます。それは一般的な言葉の感覚で可能です。たとえば、預金や自動車などは「資産」になりますし、交通費は「費用」、借入金は「負債」になります。

次に、それらが増加したのか減少したのかを考えます。資産が増加したのならば、簿記のルールで「資産は借方(左側)に残高をもつ」と決まっているため借方に仕訳します。

とりあえず「資産と費用が増えた時は借方」とだけ覚えておけば仕訳はできそうです。それ以外は自動的に逆(貸方)になるからです。

7.簿記のアウトプット(2)

簿記というシステムのアウトプットは、総勘定元帳、試算表、精算表、決算書などです。仕訳というインプットをもとに一定のルールによる分類、集計、転記などの変換作業を行うことによりアウトプットは生成されます。

コンピュータが誕生するまでは、この変換作業は手作業で行われていましたが、定型的な作業はコンピュータの得意とするところですので、会計ソフトがあればアウトプットは自動的に作成されます。

前回の記事で「10万円 - 6万円 + 8万円 = 12万円」という計算で現金の残高を計算するというお話をしましたが、総勘定元帳というのは、まさにその計算の過程をあらわしたものです。

このように増減の内訳が一目でわかり、現物の現金のあるべき金額が把握できるというのは、帳簿を記録することのメリットといえます。

会計ソフトは、まず仕訳帳から総勘定元帳への形式変換(元帳転記といいます)を行います。次に総勘定元帳の各勘定科目の残高のみを集めて下記の試算表というものを作成します。借方貸方の合計の24万円は、仕訳帳、総勘定元帳の合計と一致しなければなりません。一致しない場合は、この変換・集計過程にミスがあったということになります。 試算表は仕訳帳から元帳への手作業での転記が正しく行われたかどうかの検証目的で作成されていたものですが、会計ソフトを使用する場合は、転記ミスということはありませんので、本来の検証目的で使用されることは無くなりました。

前回の記事で、勘定科目には損益計算書に属するものと貸借対照表に属するものがあると書きましたが、試算表をこの分類で分けたものが精算表です。最終的な成果物である決算書(損益計算書と貸借対照表)は、精算表の表示形式を外部報告用に整えたものです。

8.勘定科目の設定

簿記の集計単位である「勘定科目」は、損益計算書を集計するためのものと貸借対照表を集計するためのものに分かれ、さらに、借方に残高をもつものと貸方に残高をもつものの四つに分類されるということを前回お話しました。

損益計算書の左(借方):費用

損益計算書の右(貸方):収益

貸借対照表の左(借方):資産

貸借対照表の右(貸方):負債と資本

LS会計帳簿では、この分類通りに勘定科目の設定を行います。下記の「勘定科目区分」と「貸借区分」がこの分類に相当します。

勘定科目コードは、JIS( 日本工業規格 )により制定されているものが初期登録されています。

JISの勘定科目コードは、コード番号の範囲で大中小に分類されています。大分類は下記のようになっており、LS会計帳簿の決算書ではこの大分類名が表示されます。